腹式ゼミ


ことのほか寒いこの冬の東京。
ゼミをやっている広めの会議室の温度が全然上がらず、誰もが震える。
「Sunny Skinny」というギャル仕様のあったかインナーの威力をつい試してみたい気持ちがあり、胸元の開いたVネックのセーターとスカートの組み合わせで来てしまったのが失敗だった。
こういう時は、手をこすったりするより、太腿など大きな筋肉を動かすと温かくなる。
10回ばかりスクワットをやると、あるいはシコを踏んだりすると、ぽかぽかしてくるんだけど、ゼミ中にそんなことできないし。
そっと腿上げでもしたいが、机の下には向こう側から脚が見えないための板が貼られているのでスペースがなく、身動きできない。
そこで心を集中させ、深い腹式呼吸を何度も何度も続けていたら、何とじんわり温かくなってきた。
すごい。
しかもお腹が空いてきた。
腹式呼吸は自律神経に働きかけ、血を巡らせ体温を上昇させるっていうことを思い出したのだ。
自律神経が乱れるとどんどん体が冷えてくるのは身をもって知っていたから、これぞ経験の知恵だな。

ヨガの基本のアーサナ、サン・サルテーション(太陽礼拝)を応用して編み出した「斜め上健康法」というnorah独自のメソッドがあるが、これも腹式呼吸を取り入れたもの。
背筋を伸ばし、斜め上を見て腹式呼吸をする、ただこれだけ。
体が凝ったり、ちょっと気が滅入った時なんかに効果があり、どこででもできる。

風水などで神棚を作るのがいいとかいうが、私はこれは根拠があると思っていて、要するに一日何度か目線を上に向けるのがいいのだと思う。
目線を上げて鼻から空気を入れると、交感神経が活発になるのが実感としてわかるから。
そうやって力が満ちてくることが「神様」ってことなんじゃないか。
逆に鬱状態がひどい時、人は瞼を上げる力すらない。
目を上げる、目に光を入れるって、こんなに努力がいることなんだと思ったりする。

とてもかっこいい、あるデザイン事務所があって、螺旋の階段を降りていくと、その底に巨大なマックが何台も並んでおり、デザイナーらが黙々と仕事をしている。
お客が上から降りてくるのが見えるのに、誰ひとり顔を上げない。
こんにちは、のひとつも言わない。
こんな悪い気が溜まったところで働いたら発狂すると思った。
かっこ悪くても、開放感のある場所でないとだめだ、私は。