フェルナンド・エインビッケ監督『ダック・シーズン』(メキシコ、2004年)

久しぶりの試写。しかも二本連続で観る。
プラハ!』は1968年の「プラハの春」、そしてソ連が突然侵攻してくるチェコ事件を背景にしたミュージカル。時代的にはまさにミラン・クンデラの一連の小説と重なる。
なのになぜか、レトロでお洒落なファッション映画。チェコの片田舎とは思えない女子高生たちのファッションがあまりにカラフルで可愛すぎる。金髪にヘアバンド、マーガレットのイヤリングをした60年代ファッションのテレザ(ズザナ・ノリソヴァー)は、『ロシュフォールの恋人』の頃のドヌーヴみたい。白ピケにピンクの花モチーフを襟ぐりにつけたワンピース、ピンクの半袖ハイネック・セーターにミニスカート、丸いチェーンをつなげたベルトのテレザ、グリーンにオレンジ・タイツ、レッドに空色タイツ、水色にレモンイエロー・タイツの三人娘たちのお洒落なこと。それから共産党幹部の息子でチビで眼鏡の同級生が、私をさんざん罵った知人の男そっくりで、フラれてザマーミソヅケだった。
政治情勢がすごくリアルに細かく描かれているわけではないけど、霧深い森の中、突然画面いっぱい戦車が現れるところは不気味で恐ろしかった。私は戦争のいろいろなイメージの中で、昔から戦車が一番恐い。巨大で残酷な生き物に見えるのだ。あの太い輪ゴムみたいなタイヤの周りの部分が人間を巻き込み、擂り潰していく場面はセリーヌで読んだのだったか、それともクンデラとかにもあっただろうか。忘れたけれど、とにかく恐い。
『ダック・シーズン』も不思議な味わいでよかった。白黒フィルムの断片的な使い方はジャームッシュ風で、そこにそれほど意味があるとは思わないけど。もうすぐ別れ別れになる親友同士の男の子たち、特にモコが可愛い。ジョアン・ジルベルトの「ガチョウのサンバ」のカヴァーが使われていたのもよかった。
二本観終わって「何か楽しかったなー」という気持ちが残る。特に『プラハ!』は、センスのいい女の子にはお勧めだ。