ラフカディオ・ハーン

金曜からウィルス性の風邪をひき、久しぶりに内臓がのたうつような嘔吐を経験する。病院も開いてないので、時々襲ってくる鉛みたいな腹痛と吐き気をじっと耐えるだけ。外は台風。
ちょうど読んでいたラフカディオ・ハーン『カリブの女』(「チータ」「ユーマ」を収録、平川祐弘訳、河出書房新社)の「チータ」はハリケーンに翻弄されるルイジアナが舞台のうえ、妻と子を失った男が熱病に冒され嵐のなか死んでいく話なので、すっかりシンクロした。
ルイジアナ独特の自然描写には引き込まれる。アメリカの南部は北部とも中央アメリカともカリブ海沿岸とも植生が違っていて、木々が絵の具の緑に白をたくさん混ぜたような明るい色なのと、寄生植物がとろろのようにからみついている姿が幻想的だった。どろりとして匂いの強い水をたたえた密林めいたバイユーも印象深いが、そこに溺死体がみっしり浮いているというハーンのイメージにはぞっとするものがある。