裏の小道

あかるい十三夜の昨日
近所のタタミ屋のおばあちゃんと町内を半周。
雨の日も風の日も、裏の小道を行ったり来たりしているので知っている。
思いもかけない車道沿いであらぬ方へ渡ろうとしているのを見かけたので、一応声をかけてみたら、やっぱり帰り道がわからないでいたのだった。
一緒に歩くも、おばあちゃんが一歩歩くところ、こっちはどうしても30歩ぐらい進んでしまう。
自転車をごく低速で漕ぐところんでしまうのと一緒で、歩調を合わせたらこっちがよろけてしまうのだ。
しかも一歩が超小股。
だから数メートル先で待っていると、そのたび初対面に戻ってしまい、首をかしげられる。
また一から関係が始まる。
タタミ屋の20メートルぐらい手前に来て、「ああ、ここなら知ってる!」といつもの完全無表情からようやく笑顔になったおばあちゃん(5メートル歩いてまた忘れていたが)。
歌を口ずさみ始め、人のうちの植木などを楽しみ出す。
家に入るときは「いっぱい歩いてもうほんとにドキドキした」といいながらも楽しそうで、おやすみなさいといい合って別れる。
次に会うときは、ぜったいまた完全無表情だと思うな。

おばあちゃんの定位置である裏の小道は私も好きだ。
夏が終わると急にアスファルトとかコンクリートとかが愛おしくなってくるが、それを一番感じるのがこの小道。
日が暮れると、月あかりや赤ちょうちんで照らされたアスファルトの道や電柱がきれいなのだ。
銭湯の清潔なお湯の匂いと桶がぶつかって響く音がするのも好き。
リービさんと出くわしたのもここだった。

《付記》
冒頭まちがい。
昨日の月もあまりに明度が高くてきれいだったから、昨夜が十三夜かと思った。
今日はカクヤスで買ったヴァルポリチェッラの赤を飲みながら、ベランダで何度もお月見。
バナナの味がする赤ワインって好きだ。