グアドループの日本人移民

寒い、寒い大学書庫で調べ物をしていて、面白い記述を見つけた。
読んでいたのはOruno Lara, La Guadeloupeという古い本。
1921年、パリで出版されている。

それによれば1894年12月19日、カリブ海のフランス植民地、グアドループのポワンタピートル港に神戸からの船、仙台丸が入港。
日本人移民493人が到着した。
この移民たちをめぐって議会は紛糾、「一度移民を入れたら、将来収拾がつかなくなる」などと多くの議員が強硬に反対する。
その中には文学作品などでもおなじみの黒人系社会党政治家、エジェシップ・レジティミュスもいた。
12月28日付の「Le Courrier de la Guadeloupe」紙は、事態を憂慮するレジティミュスのコメントを載せた上で、日本人はしばらく居させてやった後追い返すことが植民地のためであり、またすでに定着しているインド系移民のためでもあると、新聞としての見解を示している。

まるで外国人労働者の受け入れをめぐる、現代日本の議論のようだ。
「棄民」などと呼ばれて問題となったドミニカ共和国の日本人移民が渡航したのは1950年代。
ブラジルの日本人移民は今年100周年記念だから、それよりさらに古い話となる。
グアドループに日本から移民するなど、現代の「力関係」では想像もつかないことである。

グアドループの日本人移民については、確かエリック・ウィリアムズの『コロンブスからカストロまで』にも1行ぐらい触れてあったが、こちらの方がより詳しい。
最初からまるで歓迎されていないこの移民たちはその後いったいどうなったのか。

それにしても書庫というのは寒いし、怖い。
外に出ても冬そのものの寒さで、おかげで熱が上がって寝込む。